ImaHima in Koukoku magazine (Japanese) (August 15, 2001)

Posted on Aug 15, 2001 in Book, imaHima

Prix Ars Electronica 入賞者に訊く: 知らないうちに受賞していました
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An interview with a Prix Ars Electronica winner / I didn’t know that I won an award!

毎年、オーストリアのリンツで発表される世界最大の電子芸術コンテスト、プリ・アルス・エレクトロニカ。今年、新たに開設されたネットビジョンという部門に、あるユニークな存在が日本から準大賞に選ばれました。その名は、イマヒマ。携帯電話上でのメッセージング・ツールです。携帯電話によるコミュニティー・サービスという、思い切り日本独自のメディア環境が、なぜ、アートとして注目を浴びることになったのでしょうか。このバックストーリーを探るため、イマヒマを立ち上げた張本人のニラジ・ジャンジさんにお話を伺ってみました。

岡田智博: 受賞おめでとうございます。

ニラジ・ジャンジ: 実は僕、アルスエレクトロニカって知らないのです。ある日、いきなり「あなたは受賞しました」とか書かれたメールが届いたので、また何か詐欺っぽいスパムメールだろうと思っていた。でも、そんなメールが何度か来るうちに、ああ、受賞してしまっていたのかと理解したのです。

岡田: でも、誰かがエントリーしないと選ばれないですよね?

ジャンジ: 日本の携帯通信事情をやり取りしている国際的なメーリングリストがあるのですが、そのモデレーターの一人から、「何かに推薦したいので、イマヒマの情報が欲しい」というアプローチがあったのは覚えています。それっきり何の音沙汰もなかったのですが、どうやらエントリーされていたみたいです。そんなことなので、なぜ受賞したのかさっぱり分かりません。

岡田: イマヒマをアートだと思いますか

ジャンジ: 僕はそうは思わない。コミュニケーションのための道具です。でも、そのコミュニケーションを豊かにするために、アート的な部分はとても重視しています。だから、イマヒマを育てるにあたって、インターフェイスやその上でのキャラクター、世界観のイメージを豊かにするような画を描いてくれる、渡辺恭子さんという人に出会ったのです。彼女の画がイマヒマをいい感じのものにしてくれています。

岡田: イマヒマを始めたきっかけは?

ジャンジ: 僕自身の話からすると、インドのデリー大学で電気工学の勉強をしていました。そのころ、米国でMBAを習得したいと考えていたのですが、お金が無くて悩んでいました。そのとき富士通が日本経営修士プログラムというものをハワイ大学で開講していて、招待留学生を募っていることを知ったのです。それに応募したら合格してMBAをとりました。その際、インターシップで東京のアンダーセン・コンサルティングに行き、そのまま就職したのです。

就職した後のある休日、僕は渋谷のハチ公前の交差点に居ました。僕は一人ぼっち、でもこのたくさんの人波の中に知り合いが居るかもしれない。もし知り合いが居ることが分かれば、すぐに声を掛けて遊びに行くのに。そのときから、友達が何をしているのかいつでも分かり合えるツールがあったらいいなと思い始めたのです。

岡田: イマヒマは現在、どのようなものになっているのですか?

ジャンジ: まず、登録している人同士が、今、どこで、何をしているのかを伝え合う、メッセージング・ツールとしてのイマヒマがあります。もうひとつは、チャット機能を持った新しいバージョンのイマヒマです。これは独自の技術でパケット通信量を他に比べて極度に減らすことに成功したので、インターフェイスにも、おさいふにもやさしいツールになりました。

最初の頃、ユーザーの数が少なかったということもあって、オープンにユーザーの伝えている情報を見ることの出来るサービスを提供していました。なので、よく出会い系サイトに間違えられていたのですが、実をいうと、出会い系はあまり好きではありません。それよりも僕は、家族や友達としっかりつながりあえるための道具として、携帯があればと思っています。そこで今は、グループを作って、そのなかで伝えあうというクローズドなサービスにして、少しでも心が通うコミュニケーションを実現しようと考えています。

岡田: その考え方はインターフェイスや宣伝材料などにも出ているように思えますが。

ジャンジ: そうなのです。恭子さんにデザインの相談相手になってもらったのも、僕の気持ちとあった画だったからということがあります。もともと、彼女は立体造形をしている芸術家なのですが、日本に古くからあるようなやわらかくてやさしい感性を持った画を描いてくれ、その画をもとにいろいろなイマヒマのためのアイディアも出してくれています。

ジャンジさんのコミュニケーションへの独特の眼差しが、イマヒマに独自の世界観をもたらしているようです。モバイルは大事な人との絆を深めるためのツール。イマヒマをアートとしてみなした人は、ドットコム漬けの毎日では忘れてしまいがちな、大切な想いを実現しようとしているジャンジさんの姿勢に、文化としての美学を感じ取ったように見て取れます。

imaHima 携帯電話用コミュニケーションツール
1999年よりサービスを開始した、Webブラウザー機能を搭載した携帯電話(i-modeやezweb、J-SKY)上でのコミュニケーションツール・サービス。登録ユーザー間によって作られたサークル内で、ユーザー任意の打ち込みによる位置情報やユーザーの状態が、ウィットに富んだショートメッセージとアイコンによるインターフェイスでやり取りすることが出来る。新規サービスとして、Java携帯向けのパケット通信量を著しく抑制することに成功したリアルタイムチャットimaHima chatをリリースしている。imaHimaはNTTドコモとKDDIの公式コンテンツになっており、それぞれ、以下の方法でアクセスできる。

【iモード 公式サイト】「iモードメニュー」→「iメニュー」→「メニューリスト」→「辞書/便利ツール」→「⑧imaHima」
【EZweb 公式サイト】「EZメニュー」→「EZインターネット」 →「コミュニケーション」→「imaHima!」
【J-SKY】URL入力 http:///www.imahima.com

全体では約30万ユーザーが登録している。ニラジ・ジャンジは上記のサービスを提供しているイマヒマ株式会社の代表である。

※上記につきまして、現在のアクセス方法とは異なる場合があります。